著者:大川彰一(留学ソムリエ®代表取締役)
海外インターンシップに参加される方は、その先のグローバル就職について検討される方も多いと思います。そのグローバル就職の中には、日系企業への就職、外資系企業への就職があり、どちらを選べば良いのか迷う人もいることでしょう。
自分はどちらの方が合っているのか、どちらで働いてみたいのか、今回は日系企業・外資系企業の違いや特徴について解説していきましょう。
日系・外資系の違い
● 働き方の違い
まず入社して実感するのがこの働き方の違いです。
日系企業の場合は、会社にもよりますが次のような特徴が挙げられます。
- 入社したら研修制度が整っている
- 時間厳守(待ち合わせや就業時間)
- 規則・マニュアルに沿って仕事を進める
- 会社によっては残業の多い仕事も
- 会議では責任者以外は発言しにくい
- 仕事上でわからないことは先輩社員や同僚が教えてくれる
一方外資系の方は次のようになります。
- 仕事はできて当たり前という風土がある
- 時間よりも効率化を重視
- 自主的に仕事を創造する
- 残業をしていると仕事ができない人と見られることも
- 発言をしないといないものと見なされる
- ある程度自分で探求してからでないと、なんでも聞くと仕事ができないと見なされる
● 人事異動の違い
日系企業の場合は、転勤や職種の変更などの人事異動が定期的に実施されることがよくあります。これは、後に説明します就職方法の違いによるものです。日本は「新卒一括採用方式」で社内でのジョブローテーションなどを経て出世していくことが多くあります。新人育成や経営幹部育成を目的として導入された日本ならではの制度です。
外資系企業の場合は「ジョブ型採用」と言って専門分野をもとに採用する方式が主となります。そのため、人事異動でタイトル(肩書き)が変わることがあっても、職種が変更されることは殆どありません。
● 給与体系の違い
給与体系も大きく違います。
日系企業の場合は基本的に月給制が一般的です。職位によって給与の額が決まっていて、毎月一定の金額をもらえる仕組みです。
一方外資系企業の場合は、年俸制が一般的です。職位や経験、スキルによって年収が決まるのですが、インセンティブとして基本給+成果報酬とするような成果主義の企業が多いのが特徴です。年度が変わるタイミングで、次年度の年収が決定し、サインをすれば決定する流れとなります。
給与体系の違いには、コツコツ積み上げて行くことをよしとする日本企業と、成果を求め続けられる外資系企業との違いが表れています。また福利厚生においては、日本企業では家族手当、住宅手当、資格手当や、社員寮などの福利厚生が充実していることが特徴です。
一方外資系企業は、そういった手当などはないことが当たり前となっています。給与面で比較する場合は、福利厚生面も考慮しておくようにしましょう。
● 転職・キャリアアップ事情の違い
日系企業の場合は、歴史的に一つの会社に長く勤め上げることがよしとされてきた経緯があり、転職をする場合には一定の抵抗感を感じる企業風土があります。ただ、近年は転職はよしとされなくても、人生100年時代のマルチステージに対応するように副業を解禁する企業も出てきたり、従来の閉鎖的な体制が変わりつつあるようです。
一方外資系の場合は、転職を重ねながらキャリアアップをして行くスタイルが一般的となります。そのため人の出入りが多く、中途採用も積極的に行われています。一旦外資畑でキャリアアップして行く際には、いかに次に繋がる経験が積めるかということを意識してキャリアを構築することが求められるのです。
● 退職事情の違い
最後に、退職事情の違いです。
日系企業の場合は、企業側から退職を迫られることは殆どありません。これは労働基準法により雇用が守られているからです。
一方、外資系の場合は、少なからず解雇されるリスクがあります。ただし、よく海外ドラマや映画で見かけるような、朝に上司がいきなり解雇を告げてそのまま段ボール箱に荷物を詰めて退社ということは、あまりないのが現状です。
ある程度前に打診されるか、その予兆があるので、準備期間を経て退職することが一般的となります。また社員も、元々転職してキャリアアップすることを前提としているため、一気に職を失うということは現実的にはあまりありません。
日系・外資系それぞれの違いについてみてきたところで、次はそれぞれのメリット・デメリットについてみていきましょう。
日系企業のメリット・デメリット
メリット 1. 社内教育の環境が整っている
日系企業の特徴として、新卒一括で採用した上で社員教育を施して一人前の社員に育成していくというスタイルがあります。そのため企業は、社員教育や社員研修を重視しており、大企業になればなるほど階層ごとの研修が充実しているのです。入社時のメリットとしては、最初の時点では即戦力であることは求められないのです。
メリット 2. 収入が安定している
給与は基本給として固定化されており、収入が急に増減することはありません。安定していて、長く勤め上げることで昇給して行く傾向があります。勤続年数や年齢が上がると給与が上がって行く点が日本の企業の特徴です。
また住宅手当や通勤手当、退職金など福利厚生が充実していることも日系企業の大きなメリットとなります。
メリット 3. 仕事が安定している
日系企業のメリットとしては、抜群の安定感でしょう。
以前のように終身雇用は減少していくとしても、長期雇用を前提としている上、労働基準法で守られている日系企業では突然解雇されることも殆どないので、安心して仕事に従事することができます。
デメリット 1. 学閥があり出身大学によってある出世できるかどうかが決まる
企業にもよりますが、就職や入社後の昇給や昇格が出身大学によって優遇されることがあります。財閥系の歴史ある企業が特に多い傾向があります。
デメリット 2. 実力があっても給与が上がりにくい
社員の年齢や勤続年数を重視した年功序列型の賃金制度を導入している企業が多いため。成果を出したり実力があっても年齢が若かったり、入社して間もない場合、給与に反映されないことも多い。
デメリット 3. 会社中心の価値観を強いられることもある
例えば、次のような例があります。
- 会社の社是に基づく行動を出社中だけでなく、休日まで暗に強いられる
- 上司や先輩が残業をしていると帰りにくい雰囲気がある
- 有給休暇や産休をとりにくい
- 休日の会社のイベントに全員参加を求められる
- 仕事が終わってからも上司と部下の関係が続く
デメリット 4. 会議の時間が長い
会議のための書類作成に時間をとられたり、会議を長時間しても複数の決済者全員のコンセンサス(同意)が必要なため、なかなか物事が決定しない。
以上です。
良くも悪くも日系企業の方は新卒一括でより長期にわたって雇用していくスタイルをベースとしています。安定感はあるものの、会社都合で仕事に関わる自分の人生が決まってしまうという点がありますので、ライフプランも考慮して決めると良いでしょう。
外資系企業のメリット・デメリット
メリット 1. 自分の実力に応じた仕事ができる
外資系企業の場合は、専門分野での採用となりますので、自分の得意分野で仕事に取り組むことができます。給与や条件面に関しても基本的に自分が同意した内容なので、納得感がある形で仕事に従事できるのです。
メリット 2. 高い年収をもらえる可能性が高い
外資系の魅力としては何といっても高い給与です。面接に合格し、実際に働く前に年収を含めた条件の提示があり、それにサインをした上で仕事がスタートする流れとなります。
一般的に経験を積めば積むほど、年収は上がる傾向がありますので、年齢を重ねたり職位が上がらないと給与が上がりにくい日系企業と違い、一旦外資系のキャリアアップのレールに乗りさえすれば給与が上がりやすくなります。
メリット 3. 国をまたいで仕事ができる
英語を共通語として業務を遂行していくため、異なる国であってもある程度働き方は同じです。一旦外資系でキャリアをスタートすると、アメリカでもインドでもオーストラリアでも国が変わってもグローバルにキャリアアップすることができます。
メリット 4. 英語力が向上する
毎日英語を使用して仕事をしていきますので、英語力、特にビジネス英語は飛躍的に向上します。
外資系だからネイティブばかりかと言うと全くそうではなく、非英語圏出身の社員も多いのが実情です。様々なアクセントを持った同僚と英語でコミュニケーションを取りながら仕事していきます。今後はさらに、ある種のなまりのある英語にも慣れておくと、キャリアアップ際にも有利になります。
メリット 5. プライベート、仕事を分けて効率よく働ける
海外のビジネスパーソンは、オンとオフを分けて働くのが上手です。休みの日は家族と過ごしたり、釣りに行ったり、ハンティングに行ったり。月曜日の朝に、プライベートの話をすることは日本ではタブーな側面がありますが、海外ではスモールトークとして当たり前です。その反面、仕事中は効率よく仕事をすることに集中し、残業したり休みを取らなかったりすると、仕事ができない人(効率が悪い人)と言うレッテルを貼られてしまうので注意が必要です。
デメリット 1. 成果主義、効率主義に慣れるのに時間がかかる
外資系企業の成果主義は、常にKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)という実績が重視される点に代表されます。
日系企業では例えば、
「休日出勤や残業をこれだけして頑張りましたが、結果が出ませんでした」
と言えば上司が納得してくれる場合があるかもしれません。
外資系企業ではあり得ないことです。結果が全てとなりますので、外資系企業で上司に報告する際には。
「〇〇に取り組みましたが、◯日時点でコンバージョン(利益につながるアクション)に至っていません。対策として〇〇を新たに導入したいと思っていますが、承認いただけますでしょうか?」
のように解決策を常に提示することが大切です。
効率主義においては、いかに短時間で仕事ができるかということを常に意識しておく必要があります。具体的には、
- ミーティングは短時間で終わらせる
- メールの返信はその日のうちに
- タスクの優先順をつける
- タイムマネジメントを意識する
- 残業はしない
などです。
デメリット 2. 上司や人間関係が頻繁に変わる
外資系企業の特徴として、人の動きが激しいということが挙げられます。
直属の上司も変わることがありますが、上司のタイプによってある程度任せてくれる他いうとマイクロマネジメントが好きなタイプがいます。特に後者の場合は提出するレポートの数が増えたり、仕事の進行に大きな変化が出たりすることがあります。
デメリット 3. できて当たり前の風土がある
日系企業の場合は、社員教育を階層別にしっかり施していくという仕組みがありましたが、外資系の場合は「できて当たり前」という前提があります。後ほどご説明しますが「ジョブ型」で採用しているからです。
ただもちろん、何も教えてくれない訳ではありませんので、上司にミーティングの場面などで質問することはできます。海外インターンシップの面接で最後によく聞かれるDo you have any questions?の場面です。
デメリット 4. 孤独感を感じることがある
個人が尊重される外資系企業では、最初は孤独感を感じることがあるかもしれません。
日系企業のように歓送迎会やお花見が開催されることもないですし、仕事帰りに一杯ということもまず少ないと思います。ただ、クリスマスパーティや誕生日にカードをくれたりと、欧米式のコミュニケーションはありますので、慣れるまでは孤独を感じる可能性があります。
デメリット 5. 福利厚生が充実していない
日系企業のような住宅手当や通勤手当、退職金などは外資系企業の場合はない場合が殆どです。ただ、それらも込みで年棒を決めていくという考え方となりますので、その意識を持って年収を交渉しましょう。
以上です。
日系・外資系双方のメリット・デメリットについて見てきましたが、それぞれに良い点があることにお気づきいただけたと思います。
自分の実力を発揮する環境として、どちらが良いか、どちらが相応しいかという視点で自身のグローバルな就職先を検討していかれることをお勧めします。
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